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メモリ不足・価格変動の背景とこれからの調達をどう考えるか― 三井電子の調査と対応策 ―

  • 営業A
  • 2025年12月24日
  • 読了時間: 6分

更新日:2025年12月25日

 2025年も終盤を迎え、半導体業界ではさまざまな変化が顕在化しています。

中でも、開発・調達の現場で特に影響が大きいテーマの一つが、メモリの不足および価格変動です。

本稿では、特定の製品やメーカーを紹介するのではなく、

なぜこの状況が起きているのか/今後どのように考えるべきか/三井電子としてどのように対応しているのか

という観点から整理します。



なぜ、メモリの価格・入手性が不安定になっているのか


価格面について

 今回のメモリ問題は、単なる需要増や一時的な不足という話ではありません。

背景には、コロナ禍以降に進んだ半導体商習慣そのものの変化があります。

従来は、発注時点で価格が確定する取引形態が一般的でしたが、

コロナ禍以降は 半導体商材に関しては納品時点の市況を反映した価格が適用されるケース が増えています。

その結果、特にメモリは実質的に市況連動型(時価的な性格) を持つ部材に近づいています。

この変化により、見積取得時点では成立していた価格が、

量産フェーズや継続購入時には前提として成り立たなくなる、

といった状況が起きやすくなっています。


見積価格と「継続的に購入できる価格」は別物になりつつある



 現在のメモリ市場では、

見積時点で提示される価格と継続購入を前提とした価格との間に乖離が生じやすい

状況が見られます。

見積価格は、あくまで 「その時点の市況・条件下で成立する価格」

として捉える必要があり、 将来にわたって同条件で継続購入できることを

前提としにくい点には注意が必要です。


特にメモリは市況変動の影響を強く受けるため、

前述のとおり『見積時点の価格が、その後の量産フェーズまで継続適用できないケース』も増えています。

そのため現在は、 価格そのもの以上に

「いつ・どの数量を・どの条件で確保するか」

といった手配計画そのものが、重要な検討要素になりつつあります。


入手性と波及について

 メモリにとどまらない「波及」の視点

この問題は、メモリ単体にとどまりません。

同じ構造を持つ部材では、影響が連鎖的に波及する可能性があります。

GPU・AIアクセラレータ:メモリ構成とセットで需給が動きやすい

SSD・ストレージ:世代・コントローラ依存が強く、単純な代替が難しい

CPU/SoC:対応メモリの制約が設計全体に影響

電源・周辺部品:構成変更により消費電力や熱設計が変わるケース

「まだメモリ以外は調べていない」という段階でも、設計・調達の前提が連鎖的に

変わる可能性は、早い段階で整理しておく価値があります。


調査から見える、現在のメモリ市況

 弊社の調査および業界関係者からの情報を総合すると、

現在のメモリ市況には、いくつか共通した流れが見られました。

一部のメモリメーカーでは、DDR5世代への生産注力を進める中で、

DDR3/DDR4の生産規模を縮小する動きが顕在化しています。

これにより、DDR3/DDR4製品では

リードタイムの長期化や、従来水準から大きく乖離した価格改定

すでに始まっているケースも確認されています。


また、こうした動きは一社に限ったものではなく、

複数の主要メーカーがDDR3/DDR4の生産から段階的に撤退、

あるいは縮小する方向性を固めつつあると見られています。

その結果、DDR3/DDR4の需要が限られた供給先に集中し、

市場全体として需給がひっ迫しやすい構造になっています。


さらに、我々が把握している範囲では、

とあるCPUモジュールにおいて、従来は2か月程度だった納期が、

現在では半年以上を要するケースも確認されており、

それに伴う価格上昇もすでに発生しています。

こうした状況を受け、市場では

LPDDR4に限らず、DDR3Lについても「手配できるうちに確保」

という動きが出始めており、

調達行動の面では コロナ禍明け直後に近い状況になりつつある、

という声も聞かれます。


これらの動きは、短期的な一過性のものというより、

世代移行と生産配分の変化に起因する構造的な変化と捉える必要が

あるのではないでしょうか。


次の動きをどうする


これからのメモリ調達はどうなるのか

 業界全体としては、 短期的に以前のような安定状態へ戻るというよりも、

変動を前提とした調達設計が求められる状況が続くと見られています。


また、必要な数量を後追いで調達するのではなく、

先行して数量を確保する(アロケーションを前提とする)

考え方の重要性が、再び高まりつつあります。

期間についても、

「いつまで続くか」は断言できるものではありませんが、

長期的では無いにせよ中期的にこの前提が続くとする意見は、

業界内で少なくありません。


三井電子としての対応方針

 このような環境を踏まえ、三井電子では

特定の手段に限定せず、取り得る選択肢を幅広く持ち検討・実行しています。



具体的には、

  • DDR4については、必要数量を前提としたアロケーション確保の検討

  • 開発段階では用途や生産数量によっては、DDR3Lを含む既存世代メモリの 活用可能性の検討

といった対応を進めています。


いずれの場合も、単に「今入るか」だけではなく、

継続調達性・代替の可否・評価工数を含めた現実的な運用を重視し、

お客様の製品ライフサイクルに沿った形で検討を行っています。


アドバンテック社との連携による強み


 三井電子はアドバンテック社のプレミアムチャネルパートナーとして、

同社と継続的な情報連携を行っています。


アドバンテック社は、日本国内では福岡県直方市を拠点の一つとしており、

これはオムロン直方事業所を承継した背景 によるものです。

そのため、単なる海外メーカーの日本支社とは異なり、

日本企業特有の開発・量産プロセスや調達・承認フローへの理解が深い

という特性があります。


この連携により、

  • メーカー側が把握している需給動向を踏まえた生産計画の検討

  • 市況変動や供給制約が見え始めた段階での早期情報共有

  • トラブル発生時の、代替構成・代替時期を含めた検討


といった対応を、比較的早いフェーズから行うことが可能です。


ただし一方で、メモリ市場全体で見た場合、

産業用途向けメモリはコンシューマ用途に比べ市場規模が小さく、

メーカー単体ですべてをコントロールできるものではないのも事実です。

そのため三井電子では、 特定メーカーの交渉力に依存するのではなく、

複数の選択肢を前提とした調達計画と代替検討を組み合わせることも重視しています。


おわりに

メモリをはじめとする主要部材の調達環境は、これまで以上に不確実性を

伴うものになっています。

三井電子では、

「確実な答えを提示する」ことよりも、

現実的に止まらない開発・生産を支えるための整理と選択肢を提示する

ことを重視し、今後もお客様の検討を支援していきます。


特定の手段にこだわらず、 取り得る選択肢を一つずつ現実的に検討する。

それが、現在の環境において最も重要だと我々は考えています。


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